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2016年のエンゲル係数25.8%

毎日新聞2017年4月9日 東京朝刊より抜粋

 エンゲル係数とは

家計の消費支出総額中に占める食料費の割合。一般に、この係数が高いほど生活水準が低いとされる。

 このエンゲル係数は、19世紀にドイツの社会統計学者エルンスト・エンゲルが論文で発表して広まった。家計支 出の中で食費は嗜好(しこう)品などと比べて削りにくく、エンゲル係数が高いほど他に支出を回せていないことになり、生活は苦しいとされる。



エンゲル係数」が2016年まで4年連続で上昇している。総務省の家計調査によると、16年(2人以上世帯)は25・8%と前年比0・8ポイント増で、1987年(26・1%)以来29年ぶりの高水準となった。食料品の値上がりに加え、節約志向の高まりによる消費支出の減少、調理食品や外食の増加などライフスタイルの変化などが背景にある。

 かつてのような生活苦以外の要因でエンゲル係数が上がっている面もあり、今後も上昇傾向は続くとの見方が強い。

 16年の1世帯当たりの消費支出は28万2188円で、物価変動の影響を除いた実質では1・7%減と3年連続で減少したのに対し、食料品への支出は7万2934円で前年より1・5%増えて、エンゲル係数は前年から上昇した。16年は夏以降に台風が相次ぐなど天候不順によって高騰した野菜への支出が1・7%増となる特殊事情があったほか、調理食品への支出も5・3%増となるなど食費が支出全体の4分の1を占めるまでに至ったからだ。

  72,934円(食料品への支出) ÷282,188円(1世帯当たりの消費支出)×100

   =25,84589


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家計の食費割合、4年連続で上昇
 このエンゲル係数は、19世紀にドイツの社会統計学者エルンスト・エンゲルが論文で発表して広まった。家計支出の中で食費は嗜好(しこう)品などと比べて削りにくく、エンゲル係数が高いほど他に支出を回せていないことになり、生活は苦しいとされる。経済が発展途上では高く、成長すれば低下する。生活水準を示す経済指標として知られており、その理論通り、16年の家計調査で、勤労者のいる世帯では、低所得者層(年収449万円未満)のエンゲル係数は平均(24・2%)を上回る27・2%で、高所得者層(年収903万円以上)は21・7%だった。

 日本のエンゲル係数の歴史をふり返ってみると、記録のある46年(66・4%)をピークに49年まで60%台で推移した。経済成長とともに50年には50%台、53年に40%台、62年には30%台、79年に20%台へと下降。05年(22・9%)に最低値をつけて以降は、上下しつつも横ばい傾向が続いた。ところが、13年(23・6%)に上昇に転じると、16年まで4年連続で前年を上回った。

アベノミクスの行き詰まり露呈
 経済が成熟した日本でなぜ、エンゲル係数が上昇しているのか。総務省が14~16年の上昇幅1・8ポイント分の要因分析を行ったところ、その半分の0・9ポイント分を占めたのが食料品の値上がりだった。14年4月の消費税増税に加え、円安で輸入食品の価格が上がって食品メーカーが相次いで値上げに踏み切ったからだ。そこに消費支出そのものの減少(0・7%ポイント分)や、調理食品や外食への支出増加(0・2ポイント分)が重なった。

 現役世代は16年まで2年連続で収入増となったものの、社会保険料の負担増などで手取りが伸び悩む中、「若者世代を中心に将来不安は根強く」(内閣府幹部)、節約志向は強まっている。高齢化の進展によって、子どもの教育費負担などがなく、食費が支出の中心を占める高齢者世帯が増えた影響も大きい。16年の無職の高齢夫婦(夫65歳以上、妻60歳以上)のエンゲル係数をみても1・7ポイント増の27・3%で他の年代を上回った。エンゲル係数の「分母」となる家計支出が増えなければ数字は低下しにくいというわけだ。

 ライフスタイルの変化も見逃せない。総務省労働力調査では、16年の女性の就業率は生産年齢人口(15~64歳)ベースで66%と過去最高水準にある。女性の社会進出に伴って共働き世帯が増え、自ら食事を作る手間を省こうと調理食品を購入したり、外食したりする世帯が増加。「総菜などの味が向上したこともあり、購入量は拡大している」(大手スーパー幹部)こともあり高齢世帯にも抵抗はなくなっている。

 安倍政権は収入の増加を通じて消費を刺激し、経済の活性化を目指してきた。ただ、エンゲル係数の4年連続の上昇は、食費以外に支出が回りにくい現状を映し出しており、アベノミクスの行き詰まりも浮き彫りにした。末広徹・みずほ証券シニアマーケットエコノミストは「ライフスタイルの変化は構造的で、消費低迷は当分続きそう。エンゲル係数も上昇し続けるだろう」と予測する。【小倉祥徳】