ホウジャク（蜂雀）
多くの植物と昆虫との間には、花が昆虫へ食料として蜜などを与える代わりに、昆虫の体に花粉を付着させ、 おしべからめしべへ、あるいは雄花から雌花へ花粉を運んでもらう（送粉）という共生関係が成り立っています。 しかし、チョウやガの仲間の多くは体に花粉が付くことを嫌い、おしべやめしべに触れずに蜜を吸うための長い ストロー状の口吻を発達させました。そのため蜜だけでなく花粉も食料として積極的に運搬するハチ（蜂）の 仲間にくらべ、チョウやガの仲間は送粉にはさほど貢献していないと考えられています。
しかし、植物の方も送粉に貢献しないのに花の蜜だけが奪われるのを黙っているわけではなく、花の構造を 複雑にしたり、蜜が出る器官を花の奥の方にしまいこんだりして、蜜を求めて花を訪れる多くの昆虫に少しでも 花粉の運び手になってもらえるような工夫をしています。
そのような花と昆虫との知恵くらべのような進化の過程で、今回ご紹介するホウジャクが属するスズメガの 仲間は体長と同じくらいの長さの長いストローを持つようになり、しかも羽を巧みに速く羽ばたかせることで ヘリコプターのように空中に静止できるため、体が花に全く触れずに花の奥の方の蜜を吸い取ることができるよう 進化したグループです。
