若者よ戦場に行くな！

毎日新聞の新聞の依頼で
なかにし礼さんが綴った詩

　 2014/07/10毎日新聞夕刊3版6面の記事より抜粋

平和の申し子たちへ
泣きながら抵抗をはじめよう

2014年7月1日火曜日
集団的自衛権が閣議決定された
この日　日本の誇るべき
たった一つの宝もの
平和憲法は粉砕された
つまり君たち若者もまた
圧殺されたのである
こんな憲法違反に対して
最高裁はなんの文句も言わない
かくして君たちの日本は
その長い歴史の中の
どんな時代よりも禍々（まがまが）しい
暗黒時代へともどっていく
そしてまたあの
醜悪と愚劣　残酷と恐怖の
戦争が始まるだろう
ああ、若き友たちよ！
巨大な歯車がひとたびぐらっと
まわりはじめたら最後
君もその中に巻き込まれる
いやがおうでも巻き込まれる
しかし君に戦う理由などあるのか
国のため？　大義のため？
そんなもののために
君は銃で人を狙えるか
君は剣で人を刺せるのか
君は人々の上に爆弾を落とせるか
若き友だちよ！
君は戦場に行ってはならないなぜなら君は戦争にむいてないからだ
世界史上類のない
69年間も平和がつづいた
理想の国に産まれたんだもの
平和しか知らないんだ
平和の申し子なんだ
平和こそが君の故郷であり
生活であり存在理由なんだ
平和ぼけ？　なんとでも言わしておけ
戦争なんか真平ごめんだ
人殺しどころか喧嘩もしたくない
たとえ国家といえども
俺の人生にかまわないでくれ
俺は臆病なんだ
俺は弱虫なんだ
卑怯者？　そうかもしれない
しかし俺は平和が好きなんだ
それのどこが悪い？
弱くあることも
勇気がいるんだぜ
そう言って胸をはれば
なにか清々しい風が吹くじゃないか
恐れるものはなにもない
愛する平和の申し子たちよ
この世に生まれ出た時
君は歓喜の産声をあげた
君の命より大切なものはない
生き抜かなければならない
死んではならない
が　殺してもいけない
だから今こそ！
もっともか弱きものとして
産声をあげる赤児のように
泣きながら抵抗を始めよう
泣きながら抵抗をしつづけるのだ
泣くことを一生やめてはならない
平和のために！